初版2005年6月
「マグマ 国際エネルギー戦争」に次いで読んだ真山仁の作品。
今回も惹きつけられて読んだ。昨夜だけで2/3ほど一気に読んで読み終えても良かったのだが、気持ちを落ち着けるために今夜読み終えた。そのぐらい相変わらず読み応えある作品だった。
今作品も社会派で舞台はTVという巨大メディア。
そんな報道に対して、本書でうなされた一節があった。自身が報道に対してトラウマを抱える総務省情報通信政策局調査官の織田馨(かおる)のセリフ
「私個人は、報道に人が関わる以上、客観報道などあり得ないと思っています。ですから、ある程度の主観が入るのは当然です。大切なのは、様々な角度で事件が取り上げられているかどうかだと思います。 ... (省略)...この映像の前後に挟まるであろうキャスターのコメント一つで、どうとでもなりますから」
結局は(本書でもしばし登場する)「自己責任」で自ら解釈を打ち立てるしかないのである。何事にも表層部分だけを知って分かった気になるのは危険だと思う。
本書では、報道だけでなくバラエティ番組の代表としてお笑い番組への作者の鋭い指摘も見逃せない。マーク・トウェインの言葉
「権力、金銭、説得、哀願、迫害。たったひと吹きで、それらを粉微塵に吹き飛ばしてしまうことのできるのは、この笑いってやつだけだな。笑いによる攻撃に立ちむかえるものはなんにもない」
当たり前のようでいて意外に深い言葉だと思う。「笑い」も「深い」のだ。
報道番組もバラエティ番組も、視聴率至上主義に走ったその末路に、「幸福」があるとは思えない。
著者の「ハゲタカ」は見事にTVドラマ化された。作品の出来は素晴らしかった。しかしこの「虚像の砦」がドラマ化されることはないだろう。この予想は裏切られて実現して欲しいとは思う、しかも「ハゲタカ」並みに面白く。その時は、メディアが大きな転換期を向かえたその時かもしれない。
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