2007年10月29日第一版
著者はずっと以前に村上龍のJMMで知って以来、私が好きな数少ない投資アナリスト(と称して良いか分からないが...)の一人。彼のことを知って間もない頃に読んだ本で(書名は失念)、未だに印象深く残っているのがある。
息子(娘)がバイクに乗りたいと言ったとき親として取るべき行動は?
ヘルメットを買い与えること
山崎 元
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本書の今回のテーマは「株式投資論」に絞ったもので、やはり彼の考えや意見には大いに同感する面が多い。「新しい」かどうかは分からないが、大多数が支持する理論ではないような気がする。何故だろうか?
株式投資をゲームと断定した上で
株は情報の勝負ではない
頭脳の勝負ではない
金持ちが勝つゲームではない
努力しても上達しない
必要なのはセンスだけ(あと「運」も)
恐らく本書を読んで失望する人は、これを読んでも直ぐに利益が得られるノウハウが無い ことを挙げるかもしれない。そもそも株式投資でそんな方法論など本になること無く、すなわち誰もが儲かる方法は存在しない(あったとしても既にその方法は使われて有効では無くなっている)というのも彼の主張です。
本書では色々と同感する点は多いのだが、一つ変わった点で興味深いかったのは「行動ファイナンス」の一種かもしれない「ニューロ・ファイナンス」の話。
複数のカードの山からどれが得か損かのカードの山を判断する実験で、平均的な被験者は80枚ぐらいのカードから「この山はヤバイ」と意識し始めるが、皮膚に電極を付けて調べた反応からは20、30枚で既に「ヤバさ」を感じている
というもの。この事例から色々想像できる。
- 投資判断の誤りは脳が納得した時点で採用した「遅くて悪い」判断に原因がある
- 各種のチャート分析は大して役に立たないと思うが、が「この」感覚に従う判断材料として今以上に有効に使えるかもしれない
- この感覚を鍛える「怪しげな」トレーニンググッズが販売される
3は著者も書いておられるが、1,2は私の勝手な想像。「1」なんて「結局は勝ち負けは能力差じゃんかよ~」とするのか、「誰でも平等にもっている磨けるセンス」なのか分かれるところかも知れない。本書で述べられているセンスとは違うかもしれないが、私は後者の「センスを磨く」という方を断然支持したい。
「ニューロ・ファイナンス」まだまだ発展段階のテーマで、当時からどれほどの進歩があったのか分からないが、「行動ファイナンス」と併せて「古典的ファイナス理論」のある面を打ち砕く理論で有り得ると思う。
このニューロ・ファイナスの項を読みながら、先日読んだ橘玲の「亜玖夢博士のマインドサイエンス入門」の脊髄反射のことを、(多分私の脊髄が反応して)瞬時に思い出した。そして「金融広告を読め どれが当たりで、どれがハズレか」には薦める著者にこの山崎元と橘玲が挙げられている。
結局は自分の思想や哲学をもって事に当たらないと(株式投資もしかり)ダメなんじゃないかと思う。「必勝チャート分析法」なんてのに活路を探す姿勢では、その時は既に誰もがその方法を採用して、自分が買ったときには「既に高値」... これがこの株式投資というゲームの一面のようです。そんな時はケインズの「不美人投票」を思い出して行動するのが「合理的へそ曲がり」なのです。
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