邦題 ナイト・オン・ザ・プラネット
ロスアンジェルス 午後7時7分
ニューヨーク 午後10時7分
パリ 午前4時7分
ローマ 午前4時7分
ヘルシンキ 午前5時7分
広い世界のこれら5箇所で、狭いタクシーの中という空間で同時刻に起きる模様を描いたオムニバス映画。各都市やそこに住む人たちの(強調された?)特徴が盛り込まれたストーリーは非常に楽しい。宇宙というスケール、世界というスケールで考えることも大切なのでしょうが、タクシーの中という空間も負けず劣らず深いものがあります。
日本公開は1992年で、社会人になりたての私は、たぶん渋谷の Bunkamura で観たように記憶する。Tom Waits ファンならば Jim Jarmusch 監督作品は必見で、大学生の頃にビデオで2,3本観ていた。本作品は私がファンになってからの最初の劇場公開作だったので、公開直後に観に行った。
今回久しぶりに見ることにしたきっかけは Tom Waitsの主題歌の歌詞をネットでたまたま見かけたから。
Back in the Good Old World
When I was a boy, the moon was a pearl the sun a yellow gold.
But when I was a man, the wind blew cold the hills were upside down.
俺が幼かった頃は月は真珠で太陽はイエローゴールドだった
でも大人になると風は冷たく丘は逆さだった
歌詞の冒頭だけを抜粋して訳してみました。なので、私なりの解釈です。
映画を観て直ぐにサントラCDを愛聴していたので、私にはこの箇所だけでこの曲の世界にどっぷりと浸ってしまいます。そして、バラエティ豊かにアレンジされたこの曲が、映画の随所にわたり効果的に使われています。
ユニバーサル ミュージック (2013-12-04)
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Tom Waits が表現する Back in the Good Old World (古き良きあの世界に戻ろう) が見事にこの映画に溶け込みます。
さて久しぶりに見た本作品なのだが、当時は堪能しなかったパリとヘルシンキ編が非常に良かった、特にパリ編。妖艶なBeatris Dall(ベアトリス・ダル)が盲目の乗客を演じ、自らの人種(肌の色)にコンプレックスを持つアフリカ人ドライバーとのストーリー。
サングラスをしていないベアトリスに対して
ドライバー: 盲目の人ってのは普通サングラスをかけるもんじゃないのか?
ベアトリス: そうなの?私は盲目の人を見たことないから。
(翻訳は私)
それから、愛する人を1ブロック離れた先でも感じ取れる盲人の能力を信じないドライバー。
偏見に溢れた世の中(ドライバー)と、自らの世界を持っている者(乗客)との関係を簡潔に表している会話だと思う。自分が見えるものだけしか信じることができない人たちに、盲人のベアトリス・ダルは皮肉な笑いを浮かべるだけ...。
Jim Jarmusch作品はその映像美もさることながら、その会話が素晴らしい。高潔で品位のある会話とは程遠いが、その自然体の会話にリアルさを感じる。そして、物悲しくもあり、ユーモラスでもある。悲しみの絶望のような状況を描きながらも、どこかユーモアがあり希望が残るのです。
5つの全てのストーリーで笑えます、ユーモアに溢れています。大笑いするのはやはりローマ編なのですが、ここでその内容は書けるものではありません。その話だけで、聞いてる神父が窒息死してしまうほどの内容です。私は笑い死にしそうでしたが...^^;
戻るべきGood Old World は人それぞれなんでしょうね。私のGood Old World も結構笑えるね。それは幸せなことだと思う。
PS
この映画のおかげか、それほど頻繁ではないが、国内の多くの場所でタクシーに乗るたびにドライバーの方に話しかけるようになった。東京以外では何処に行っても私はStranger(よそ者)に見えるようで、ドライバーの方も気軽に色々と話してくれた。
- 京都人の特殊性を自虐的に教えてくれた京都のドライバー。
- 大阪の長崎マニアのオバサンドライバーは、教えてあげた長崎ネタのお礼なのか不正な領収書を頼みもしないのに大量にくれた(直ぐに捨てたけどね、使える代物ではなかったから)。
- 映画好きなのか不正コピー好きなのか分からない京都のドライバーは、頼みもしないのにお勧めのコピーDVDを数枚くれた。「公開前」だと言って自慢気だったが、映像は粗くて観れる代物ではなかった。
- (博多では、かつてないほどにタクシーに乗ったが、残念ながら飲んだくれの日々だったので楽しい会話の記憶はない。付き合う直前の女性との悲劇的な出来事はあったが、ここでは書けません...。)
- 先日乗った地元のタクシードライバーとは干拓の是非を議論。意見が一致して盛り上がった。
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