カッチョ良かやろ、オイのバイクは。
ウォッカに似合うバイクは、やっぱこいバイ。
嘘です、こんな発言をオーナーはしてません、ちなみに下戸とのこと。
こんな風に、道の駅「夕陽が丘そとめ」に到着したのが、午後4時前。仕事を懸命に終えて、焦って出発したのが良くなかったのか、イマイチな走りでここまで来た。佐世保バーガー食い&干物ショッピングを目指して走り始めたが、気分が乗らない。工事現場に向かうダンプカーの一群が複数、バスも何台も、交通の状況も悪し。
こんな時は、悪い原因ばかりを探しがちで、交換した「久しぶりの Pilleli タイヤに慣れてないんだ」とか、私が嫌悪する「ヒトのせいにする」傾向が脳みそを支配しがちになる。
それでも時折、頭が空っぽの「イってる状態」に入ると、やっぱり楽しいので、このまま走り続けようかと思案してる時に、サイドカー登場となった。
サイドカー登場の前に、ハタチそこそこに見える VTR250 のライダー(男)も来たが、予想通り会話するようなライダーではなかった。バイクのカスタム具合などで、80% 以上の確率でわかる。私の方も、私のバイクも「敢えて見ようとしない」挙動が不審。見るのは、スマートフォンばかり、景色さえ見ようとしてない。
若者よ、それで良いのか!?
ここからは、サイドカーライダー 70 歳男性(「ロック爺」と記す)との会話と、すぐに「乱入」した「バイクのフォルム好きの 30 代に見えるお姉さん」(「お姉さん」と記す)との会話。
ここで「ロック爺」と称した理由は、大したことがないので割愛、「ノリで」解釈して下さい。そして、記した会話は 80% の精度で正しい。脚色はあるものの、現実の方がもっと面白い。その「現実の面白さ」までは、さすがに再現することは不可能。
この会話に、遠巻きに見て入りたい様子だった VTR250 の若造ライダーは登場しない。若造が登場できなかった理由が、若気の至りか、「スマートフォン依存症」なのかに私は興味がない。「登場しなかった」ことが全てを物語っている。
ロック爺と二人だけの会話の中盤、「会社リタイアしました」風の親父がサイドカーと、俺のバイクを舐めるように眺めるも、私らの会話に入らず。「おじさん、顔怖いよぉ〜」と子供が絶対になつくことのない怖い顔して我々の周囲を歩き回る。ロック爺が、彼を軽快に無視している様がおかしかった。多分「出る杭を打つ人」だと思う、残念でした(笑)
思えば、ロック爺との会話は、伊坂幸太郎の小説並みに面白かった。「フィッシュストーリー」収録の「サクリファイス」の 92 歳の婆さんを彷彿させる、そんなオモロイ老人は実在してると痛感した。
やっぱ「リアルな現実」の方が断然面白い!!
ロック爺との出会い
私が、もう自宅へ帰ろうか佐世保バーガーか逡巡してると、ロック爺がサイドカーで登場。思わず声をかけてしまった。
りんだ :このバイクは何ですか?
ロック爺:あぁ、ドカティね。オイのバイクにも Brembo 付いちょっよ。
りんだ :(いきなりそんな話題!?フロントブレーキを見る)うぉ、Brembo やん!
ロック爺:そうやろ。こんサスペンションはね...
ここからサスペンション話題。半分以上は意味不明。でもロック爺の「パッション」が痛いほど伝わる。それが妙に心地よい。
りんだ :ところで、(このサイドカー)どこのバイク?タミヤのプラモの「ドイツ軍のサイドカー」っぽいですね。
ロック爺:ウラル。
りんだ :え?! ウラル...、分かんねぇ〜!
ロック爺:ロシア!
りんだ :あぁ!え?ロシア、バイク作るの?
ロック爺:作るよ、ドイツ車のパクリね。
お姉さん登場
この後、ドイツ車と URAL に続く歴史の流れを聞く。半分ほど理解したが、真偽のほどは不明。そんな中、登場したのが
お姉さん:(サイドカーに近づきながら)すごいバイクですね、写真撮って良いですか?
と、薄っすらとピンク色の iPhone、カバーを付けていないことに好感。黒縁メガネの、笑顔がキュートな女性。
ロック爺:お!?バイク、好きね?
お姉さん:好きというか、フォルム、格好が素敵ですよね、バイクって。
ロック爺:バイク乗るのか?
お姉さん:いやぁ〜、乗ってみたいんですが...
りんだ :乗ろうよ、バイク(笑)
ロック爺:うんうん、「バイク乗るのは女らしくない」とかいうのは、間違っちょる!
りんだ :うんうん、間違っちょる!(このサイドカー)どこのバイクか分かりますか?
お姉さん:え?どこのだろう...
ロック爺:ウラル。
お姉さん:え?ウラル?
ロック爺:そうウラル。
りんだ :ロシアだって。
お姉さん:え?ロシア?
彼女も私と同じ「ロシアってバイク作ってるんだ」の反応。ロック爺、URAL バイクの歴史を再び語る。お姉さん、なかなか良い反応で食いついている。
その会話の中で、「側車(つまり、サイドカーのサイドに付いてる奴)も動くよ」という話が耳に入った。
りんだ :あ、だから 2WD なんだ!!
お姉さん:おぉ!!
りんだ :車やん。そうか、軍用なら泥沼に入っても、這い上がる 2WD ですね。
ロック爺:まぁな。でも、今じゃそんなとこ走らんよ。
りんだ :そりゃそうや。好き好んでバイクで沼地なんて走らんよね。
ロック爺:走らん。
りんだ :でも、軍用車って感じですね。
お姉さん:(私のバイクに近づきながら)こちらのバイクも撮って良いですか?
りんだ :どうぞ、どうぞ(笑)
ここから、ロック爺がヨーロッパを訪問した話、欧州車の話など。ロック爺が何者か未だに不明だが、外国のことは経験上非常に詳しい、というか興味があるようだ。欧州車の「曲線美」について語っている。
ロック爺:お姉さん、クルマ何に乗ってる?
お姉さん:あぁ、軽自動車です、軽が好きで...。
ロック爺:この前、iPad でプリウスの最新のデザインを見たけど、カッコ悪いな、あれ?
りんだ :プリウスですからね、カッコ悪いっスよ。
お姉さん:うんうん。
りんだ :軽自動車より、このバイクの排気量のが大きいよ。でも、軽も(値段が)高いですよね?
お姉さん:高い高い(笑)
ロック爺:バイク乗りなよ!
お姉さん:そうですねぇ〜(笑)
りんだ :このバイク(サイドカー)、スコップ付いてますやん!
お姉さん:あぁ、付いてる、付いてる!
りんだ :さすが軍用車!
ロック爺:あぁ、それ、使ったよ。なんか良さそうな木があったんで、(スコップで)掘り起こして持って帰った。
りんだ :泥沼にはまった、とかじゃないんだ?
お姉さん:(笑)
りんだ :もはや、軍用車とは関係ない!(笑)
この時点で、30 分余り経過。
お姉さん:じゃ、そろそろ(笑)
ロック爺:おぉ、ゆっくりしていけば...
お姉さん:いやぁ、仕事中なので(笑)
りんだ :では(笑)
お姉さん:はい(笑顔)
ロック爺と二人きり
私が聞くともなしに、ロック爺の年齢がちょうど 70 歳とわかった。Mick Jagger や Keith Richards を思えば、こんな 70 歳に驚きはしない。ロック爺が吸ってるタバコは「ハイライト hi-lite」、イメージ通りの「そのまんま」で笑ってしまう。
Mick Jagger より痩せている出で立ち、ブルージーンズにふくらはぎの大半を覆うロングブーツはカスレタ焦げ茶色。似合いすぎで、お洒落以上のカッコよさに惚れ惚れする。
りんだ :缶コーヒーでも?
ロック爺:あ、オイは、飯前には飲み食いせんとよ。
おぉ、Mick Jagger 体型にも努力の跡が垣間見える。
ここからの話は濃すぎて、且つ爺さんのプライバシーにも配慮して多くを割愛する。日本の法律では「いかがなものか」という話も多数。
ロック爺:この国はな「長い釘は打たれる」だな...
りんだ :俺、打たれ続けてきました。
ロック爺:(笑)そうやろ?私と年が近い、ロック爺の息子さんは、シリコンバレーに数年家族と海外赴任してたそうだ。
りんだ :シリンコンバレー? 俺、長期出張で行きましたよ。
ロック爺:息子の会社は、*で始まる会社名、場所は***や。
りんだ :あぁ、***ですね。
ロック爺:それ!私に当てられたのに驚いていたロック爺だが、シリコンバレーのことを少し知っていれば分かる会社。職種的には、息子さんと私は同じだと思う。ロック爺はそこまで詳しくなかったが、Google のことも軽快に理解していたロック爺なので、察したことだろう。
ロック爺:オイも現役ば、そろそろ引退ばい。
何の「現役」かは書かないが、むっちゃ面白い。40代、50代で弱っている場合ではないのだ。「男」たるもの、そうじゃなきゃね!!
りんだ :俺、昔の音楽が好きで、The Rolling Stones の大ファンなんです。Mick Jagger は、確か 73 か 74 歳ですよ。
ロック爺:Mick Jagger かぁ...
ここから、唐突に先日通ったという英会話らしいカルチャースクールで、英国訛りが聞き取れなかったが「口元とノリで理解した」という訳のわからないことを爺さんは話し出す。
ロック爺:Mick Jagger の Jagger て「じゃぐわぁ」て発音なんだよな。
りんだ :うん、「じゃぐわぁ」ですよ(笑)
ロック爺:Mick Jagger て、この前気づいたけどな、顔はカッコ良くねぇな?りんだ :音楽は「顔」じゃないですから。
ロック爺:そうかそうか(笑)
ロシア、韓国、中国、今では、主に中国、韓国辺りを定期的に、奥さんと二人で旅行しているとのこと。この 11 月も、格安チケットで韓国旅行を予定してるとのこと。あまりの安さに驚く、国内旅行よりもバカ安!
(女は)心だよ
りんだ :そんなことまで、奥さんと話してるんですか?
ロック爺:あ?そんなこと話せない夫婦は、夫婦じゃなかよ。
りんだ :あぁ、なるほど、分かります。羨ましいです。
ロック爺:やろ?!心ばい。「男も心です」とは言わなかった。多分、ロック爺には野暮な発言、当たり前なことなのだ。
ロック爺:オタク、英語、できる?
りんだ :普通の日本人よりも、できると思います。
ロック爺:どぎゃんして勉強した?
りんだ :...、えぇと、自分一人で...。人に教えてもらうことが嫌いなので。英文をたくさん読みました。
ロック爺:そうか...。この私の答えは、ロック爺の期待する答えじゃないのは分かっていたが、それでも嘘をつきたくなかったので、正直に答えた。案の定それ以降、英語学習の話題にはならなかった。ロック爺の外国への、その興味と姿勢だけで、多分面白おかしく切り抜けられるような気がしたから。
午後 5 時ちょうどだったと思う、ロック爺がおもむろに携帯電話(老人向けの古いガラケー、正しい選択!)を取り出して電話をしだした。
ロック爺:刺身、買うたから、ワサビば擦って待っちょって。
奥さんへの電話。聞けば、この道の駅のかなり先の漁港で、刺身にする魚を買いにサイドカーで出動したとのこと。サイドカーの側車には、魚が入ってると思われる段ボール。
りんだ :魚、今日は何がありました?
ロック爺:小さい鯛。刺身の切り身じゃなくて、(三枚に)おろしてもろた。
りんだ :あぁ、そっちの方が美味いですよ。
ロック爺:今日の晩飯。
そんなこんなで、一時間半以上は話した。
ロック爺:じゃ...。お兄さん、何曜日に走ってる?
りんだ :何曜日かな...、決めてないです。***に住んでます。
ロック爺:あぁ、***か。
りんだ :***からすぐです。
ロック爺:オイは長崎のジゲもんやから分かる。オイの名前は***。
りんだ :あぁ、微妙に似てます。私は***です。
ロック爺:そうか、***の***さんか。
りんだ :お住まいは?
ロック爺:***。
りんだ :そこに、私が子供の頃、叔父が住んでました。
ロック爺:そうね(笑)
りんだ :このバイク、バックするんですよね?
ロック爺:するよ!
サイドカーを動かす準備をしていたロック爺に、握手する右手を差し出した。ロック爺は、付けていた皮のグローブを外して、ガッチリと握手してくれた。
ロック爺:最後は、説教じみたことば言うたけど...、歳は関係なかて思うちょる。
りんだ :歳は関係ないです、説教ではないです、たまには叱って欲しいくらいです。
ロック爺:(笑)
りんだ :楽しかったです。
ロック爺は、慣れた手つきでエンジン始動、サイドカーはバックした。ロック爺を見送りながら、そこで気づいた。
電話番号ぐらい伝えておくべきだった
こんな爺さんと話してる
その瞬間が楽しかった
今度、幸運にもロック爺さんに再会できたら、ちゃんと連絡先を交換しようと思う。そうなったら、それこそ「運命」と呼ぶものかもしれないし、
やっぱ、(人間は)心
約 10 分後、ロック爺が帰った後に出発。ロック爺の住所を考えると、途中までの帰路は同じ。追いつけば何らかのアクションをしようと思った。しかし、若干の渋滞のため、それも叶わなかった。
それはそれで良い。
やはり、この道の駅の夕陽は素敵だ、特にこんな日は。
PS
帰宅後、URAL というバイクを調べた。ロック爺の言う、意味不明だった「10年落ち」の中古という意味が分かった。「ロックだね」(笑)
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