脚本:黒澤明、橋本忍、小国英雄
公開:1954年4月26日
言わずと知れた黒澤明作品の頂点にある作品の一つ。
ここ4,5年、自分が目指したい道に「武士道」というものが見え隠れし始めた。三島由紀夫の「葉隠入門」もきっかけの一つだが、それよりずっと前に出会っていた黒澤作品にその原点はある。
黒澤作品を初めて観たのは中学生の頃、水曜ロードショー(だったと思う)の特番でやった「影武者」。三歳上の兄貴とTVにかじりついて観た。当時どこまで理解できたのかは疑問だが、ムチャクチャ面白かったのは覚えている。007など洋画ばかりを観ていた当時、初めて本物の時代劇に触れたという衝撃もあったと思う。
「七人の侍」は観るのは今回で三回目。最初は大学生の頃にレンタルビデオで観た。見る前にはどこか文学的で分かり難い作品を想像していたのだが、何のことはない超一級の娯楽作品である。しかしそのリアリティには驚くほかなかった。
以来、黒澤作品以外の時代劇にはリアリティを感じなくなった。真実の武士がどのようなものであったか知る由もないが、七人の侍の武士が私の中では真の武士になっている。立ち居振る舞い、言葉遣い、そして姿勢の全てが。
二回目は社会人になって間もない頃、東京銀座の「並木座」のリバイバル上映。黒澤特集だったと思う。食券機みたいな機械で買ったチケットで入場し、小屋みたいな小さな映画館で観る黒澤作品は格別だった。しかも超満員で立ち見、しかも207分の超大作。中盤にスクリーンに「休憩」という文字が映し出され、荘厳な音楽だけの10分程度の休憩も微笑ましかった。何回となくこの作品を観たであろう人たちの幸せそうな笑顔や、シーン毎のツボを知っている反応も忘れられない。
そして今回。新たに感嘆したのはセリフの深さ。映像のディテールとリアリティさの魅力に加えて、要所要所で驚くほどに的確なセリフ。侍のだけではなく、百姓、長老、平民などなど、そのセリフの後に思わず「おぉ~」と唸ってしまうほどに深い。
これが1954年の作品なのである。もう半世紀前である。人間の社会、価値観なんてそう簡単には変わるものではないようだ。単なるファンタジーも悪くはないが、黒澤作品にあるリアリティの先にあるファンタジー、そしてロマンの方を私は選ぶ。
これからもノンビリと、黒澤作品を観ていこう。何度も、何度も。そこにある心優しい人間、黒澤明の姿を感じながら。
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