被告人 Fred に対する主な証拠は「現場にあった犯人の血液と Fred の血液が一致」というもの。この血液は「1,000 人に 1 人」のタイプ。これらの条件から Fred が「無実である確率」は?
これは、Norman Fenton, Martin Neil 著 "Risk Assessment and Decision Analysis with Bayesian Networks" の "5.4.2 The Prosecutor Fallacy Revisited", "5.4.3 The Defendant's Fallacy" をもとに記した。
CRC Press
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条件から
E: Evidence「証拠」は 「Fred の血液のタイプが現場にあった犯人のものと一致」
H: Hypothesis「仮説」は「Fred は無実」
事前確率 P(H) を次のように考える
Fred が有罪である証拠は何もない場合、犯行があった町の成人男子が容疑者として疑われる確率
そのような成人男子が 10,000 人いるとして、P(H) = 9,999/10,000, P(not H) = 1/10,000 とする。
P(E | H):尤度は、「Fred は無実で、Fred の血液のタイプと現場の血液が一致」。これは、「1,000 人に 1 人の血液型のタイプ」の人が「偶然に現場にいる確率」で 1/1,000 となる。
not H は「Fred が犯人」なので、P(not H) は「Fred が犯人で、血液のタイプが一致する確率」は 100% 、つまり P(not H) とする。
求める「無実である確率」は、Bayes' rule から P(H | E) = { P(E | H) P(H) } / P(E) 、この分母は P(E) = P(E | H)P(H) + P(E | not H)P(not H)
分子:P(E | H) P(H) = (1/1,000) × (9,999/10,000)
分母:P(E | H)P(H) + P(E | not H)P(not H)
= (1/1,000) × (9,999/10,000) + 1 × (1/10,000)
> ((1/1000)*(9999/10000)) / ((1/1000)*(9999/10000) + 1*(1/10000))
[1] 0.9090826
よって、求める確率は 約 91 %となる。
この結果は、「血液が 1,000 人に 1 人のタイプと一致」という証拠だけでは、Fred を有罪とするには確率的に不足することを示している。
検事の主張とは裏腹に、またこのように確率を算出しないと気づかない、無罪である確率が依然として高いことが "the prosecutor's fallacy" 。
誤る原因
下図は、今回の問題と同じことを表している。
つまり、the prosecutor's fallacy の主な原因は
P(H | E) = P(E | H)
言葉にすれば
P(E | H) = Fred が無罪である場合、「1,000 人に 1 人」の事象が起こる確率
P(H | E) = 「1,000 人に 1 人」の事象が起こる場合、Fred が無罪である確率なのだが、直感的には理解しにくい。表記を単純化して
P(有罪 | 証拠) = P(証拠 | 有罪)
としたところで、依然として「成り立つような気がする」。
P(H | E) = P(有罪 | 証拠) として加味されいない情報が、上図の例では
「10,000人に1人のDNA」の証拠は、1,000,000 人の都市の場合、10,000/ 1,000,000 = 1/100 で依然として有罪である確率は 1 % しかない
というもの。
P(H | E) = P(E | H) が、常に成立しない例として「条件付き確率、ベイズの定理」で示した
P(数学が得意 | 理科が得意) = P(理科が得意 | 数学が得意)
は直感的に納得できるだろう。
The Defendant's Fallacy:被告側の誤り
この確率の結果から、被告の弁護士は次のように主張した
検察側の証拠から、被告人が無罪である確率が極めて高い結論に至りました。よって、この証拠は検察側の主張を裏付けるものではなく、除外すべきものであります。
この弁護士の主張は妥当だろうか?
この確率算出の結果、事前確率 P(H) = 1/10,000 は、事後確率 P(E | H) = 9/100 に変化した。つまり「10,000 人に 1 人から、100 人に 9 人の確率」へ 900 倍増えた。
つまり、900 倍に増えたことに加え、今回の証拠は単に「一つの証拠」に過ぎない。更に証拠が追加されると、事前確率は 9/100 からに有罪に傾く。
よって、被告弁護士の主張は誤りで、これが "the defendant's fallacy" 。

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