発行:文庫版2011年6月10日第6刷(単行本2007年11月30日)
「アヒルと鴨のコインロッカー」に続いて伊坂幸太郎著作の三冊目となった。著者のことは知らなかった頃でも、これを原作とした映画の存在は知っていた。
「ゴールデンスランバー」て、The Beatles の Golden Slumbers なのか?
という鮮明な記憶だけは残った。
The Beatles の Paul McCartney の楽曲は、John や George のより好きになれない、これはかなり前からの一貫した意見。それでも Golden Slumbers だけは、もっとも好きな Paul の楽曲なのも一貫している。
直訳すれば、黄金のまどろみ、となるのかもしれないが、歌詞の内容はほとんど子守唄だった。ポール・マッカートニーの絞り出す声で、高らかに歌われるその曲は、不思議な迫力に満ちている。P.155
楽曲 Golden Slumbers の魅力を言葉にしたことはなかったが、確かに「不思議な迫力に満ちている」。
実質的に The Beatles 最後のアルバム Abbey Road のLP盤B面の三曲目 You Never Give Me Your Money から The End までの 8 曲の「壮大なメドレー」、その中の一曲が Golden Slumbers 。このメドレーそのものが、私にはたまらなく「ロック」なのだが、中でも Golden Slumbers には不思議な魅力ある存在。
本作のテーマは多彩だ。副題の「A Memory(記憶、思い出)」や過去の事象が繋がる展開は著者ならでは。信頼や正義という普遍的なテーマの扱い方にも共感する。それらに加えて、本書で際立っているのが「権力」、怖いほどに暗躍している「権力」なのだ。
「でも、あれ、JASRAC とかが、文句言ってくるんじゃねか?」
「怖いな」だが、ビートルズはさすがに JASRAC とは無関係なのではないか、とも思った。
「怖いぞ、権利持ってる奴は」P.139
700 ページ近くある本書だが、序盤のこの引用の最後のセリフで、この物語が描こうとしているテーマを予感した。そして、それは期待以上の内容だった。
8 時間の Golden Slumber
本日、昼から予定が変更になり急遽休みになった。やることはあったが、「今日でなくてもいいや」という感じで、あっさり休みにした。それならば、と思い立ったのは
一気にどこまで読めるかな?
読み続け約 8 時間
仕事に関する専門書も、これくらい集中できたらと思うのだが...。とはいえ、こんなことをやってみたのは、そんな集中力を試したかったのもあった。要は「集中のさせ方」なのだが、やり方次第では、不可能ではないと感じた。
「趣味の読書と仕事は違うのでは?」の疑問に対しては、私は否定する。「集中してクオリティを上げたい」ことは、どちらにも共通する。クオリティを求めない仕事は、もはや仕事ではない と思う。
本書のメッセージは決して軽くない、だからこそ「一時の笑い」に救われる。
「本当にすみません。こんな迷惑なお願いで。でも、頼れる人がいないんですよ。全然、ロックじゃなくてすみません」
しきりに頭を下げる青柳雅春に、岩崎英二郎は低い声で、「いやあ、ロックだよ」と、けたけた笑った。「入れよ、運んでやるよ、着払いか?」P.409
無様でも、どんな状況でも、笑い飛ばしながら突き進みたい。その方が「ロック」だからね(笑)
ゴールデンスランバー(2010年日本映画)に続く。
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