2016年10月5日水曜日

ゴールデンスランバー(2007年小説)

著者:伊坂幸太郎
発行:文庫版2011年6月10日第6刷(単行本2007年11月30日)

ゴールデンスランバー (新潮文庫)
伊坂 幸太郎
新潮社
売り上げランキング: 6,017

アヒルと鴨のコインロッカー」に続いて伊坂幸太郎著作の三冊目となった。著者のことは知らなかった頃でも、これを原作とした映画の存在は知っていた。

「ゴールデンスランバー」て、The Beatles の Golden Slumbers なのか?

という鮮明な記憶だけは残った。

The BeatlesPaul McCartney の楽曲は、JohnGeorge のより好きになれない、これはかなり前からの一貫した意見。それでも Golden Slumbers だけは、もっとも好きな Paul の楽曲なのも一貫している。

直訳すれば、黄金のまどろみ、となるのかもしれないが、歌詞の内容はほとんど子守唄だった。ポール・マッカートニーの絞り出す声で、高らかに歌われるその曲は、不思議な迫力に満ちている。P.155

楽曲 Golden Slumbers の魅力を言葉にしたことはなかったが、確かに「不思議な迫力に満ちている」。

実質的に The Beatles 最後のアルバム Abbey Road のLP盤B面の三曲目 You Never Give Me Your Money から The End までの 8 曲の「壮大なメドレー」、その中の一曲が Golden Slumbers 。このメドレーそのものが、私にはたまらなく「ロック」なのだが、中でも Golden Slumbers には不思議な魅力ある存在。

本作のテーマは多彩だ。副題の「A Memory(記憶、思い出)」や過去の事象が繋がる展開は著者ならでは。信頼や正義という普遍的なテーマの扱い方にも共感する。それらに加えて、本書で際立っているのが「権力」、怖いほどに暗躍している「権力」なのだ。

「でも、あれ、JASRAC とかが、文句言ってくるんじゃねか?」 
「怖いな」だが、ビートルズはさすがに JASRAC とは無関係なのではないか、とも思った。 
「怖いぞ、権利持ってる奴は」P.139

700 ページ近くある本書だが、序盤のこの引用の最後のセリフで、この物語が描こうとしているテーマを予感した。そして、それは期待以上の内容だった。


8 時間の Golden Slumber

本日、昼から予定が変更になり急遽休みになった。やることはあったが、「今日でなくてもいいや」という感じで、あっさり休みにした。それならば、と思い立ったのは

一気にどこまで読めるかな?

本書の既読の 100 ページから、どこまで読めるかやってみることにした。午後 2 時半ぐらいから読み始めて、途中、ビール買いに行ったりシャワー入ったりで 30 分ほどの休憩があった。食ったのはカレーパン一個。食欲よりも、読みたい欲求が勝った。時間も気にせず、物語だけを追った。そして読了、午後 11 時ちょうどだった。

読み続け約 8 時間

一人で 18 時間以上仕事をし続けたことはあるが、読書だけで 8 時間はやったことがなかった。途中「飽きるだろう」と思ったが、そんなことはなく、どっぷり浸りながら読み続けた。

仕事に関する専門書も、これくらい集中できたらと思うのだが...。とはいえ、こんなことをやってみたのは、そんな集中力を試したかったのもあった。要は「集中のさせ方」なのだが、やり方次第では、不可能ではないと感じた。

「趣味の読書と仕事は違うのでは?」の疑問に対しては、私は否定する。「集中してクオリティを上げたい」ことは、どちらにも共通する。クオリティを求めない仕事は、もはや仕事ではない と思う。

本書のメッセージは決して軽くない、だからこそ「一時の笑い」に救われる。

「本当にすみません。こんな迷惑なお願いで。でも、頼れる人がいないんですよ。全然、ロックじゃなくてすみません」 
しきりに頭を下げる青柳雅春に、岩崎英二郎は低い声で、「いやあ、ロックだよ」と、けたけた笑った。「入れよ、運んでやるよ、着払いか?」P.409

無様でも、どんな状況でも、笑い飛ばしながら突き進みたい。その方が「ロック」だからね(笑)


ゴールデンスランバー(2010年日本映画)に続く。

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