2016年10月6日木曜日

ゴールデンスランバー(2010年日本映画)

監督:中村義洋
脚本:中村義洋、林民夫、鈴木謙一
原作:伊坂幸太郎

ゴールデンスランバー<廉価版> [DVD]
ゴールデンスランバー<廉価版> [DVD]
アミューズソフトエンタテインメント (2014-04-23)

8 時間ぶっ続けで読んだ原作、その直後に映画を観る。

伊坂幸太郎原作の中村義洋監督による映画「アヒルと鴨のコインロッカー」「フィッシュストーリー」「ポテチ」はかなり良かったので、今回も期待した。が、一抹の不安もあった。それは配役への不満。

残念ながら、その不安は的中した。原作を読んだ直後ということを差し引いても、良いキャスティングとはいえない。好みの問題なのだが、他の作品の配役が良かったので、余計にそう感じてしまう。

本作への悪い予感は冒頭からあった。

Golden Slumbers の原曲が流れない

「アヒルと鴨...」の Blowin' in the Wind のようなものを期待した訳ではないが、「ちょっと違うんじゃないの」と思った。譲歩したとしても「日本人のカバーじゃダメよね」は譲れない。「発音」もあるけど「雰囲気」、それこそ本作で主張される「イメージ」の問題だ。

前の投稿でも引用した次のセリフが、皮肉以上に思えてくる。

「でも、あれ、JASRAC とかが、文句言ってくるんじゃねか?」 
「怖いな」だが、ビートルズはさすがに JASRAC とは無関係なのではないか、とも思った。 
「怖いぞ、権利持ってる奴は」 P.139

楽曲使用とキャスティングの件は目をつぶれたが、大いにダメなのが、小説とくらべて、物語が断然「薄っぺらい」ものになってしまったこと。根幹のテーマだと思っている「権力」の描写が断然薄いのだ。結果、チープな「友情物語」に終始してる感じだ。dilution 希薄化 という表現がぴったりの残念な出来になってしまった。

本来、原作に描かれていたはずの、「見えない」立ち向かう先の「悪の描写」が弱いのだ。

  • セキュリティポッドに象徴されるプライバシーの侵害
  • マスコミの「害」
  • 政治家の姿

これらが「ごっそり無くなった」と思えるほどに希薄化してる。

「ケネディ暗殺」については、私も一時期はまって沢山の本を読んだ。それを題材にした原作は「日本版ケネディ暗殺物語」として上出来なのに。そういうテーマで作らせない「圧力」があるのかと、うがった見方までしてしまう。それとも、そんなテーマでは娯楽作品は作りにくいのが、今の日本映画なのだろうか?

いずれにせよ残念な作品。この作品の存在を、私は忘れることにしました。

Harley-Davidson がスポンサーに付いているのだろうと思わせる時点で「ロック」でもなくなっている。重ねて残念な作品だ。

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