発行:2015年3月10日初版
先日「速読するような本は読まない」と書いたばかりだが
あぁ、速読するってこういうことか
「大げさなタイトルだな...」と嫌悪感もあった。それでも最後まで読んだのは、超最低な本「統計学が最強の学問である」よりマシで、「人工知能の歴史」を概観できると思ったから。そして、著者の「人工知能ってそんなことまでできるんですか?」同様に、「ざっくりとした切り口」の表現は分かりやすかったから。
とはいえ、すでに 4, 5 日前に読み終えたのに、今頃投稿していることからも「大した本じゃない」ことを物語る。悲しいかな、この分野における、日本人による良書が少なすぎる。まぁ、今となっては英文の方が読みやすい私が、そのことを悲嘆することはないのだが(笑)
それでも、本書でフムフムという点はあったので、それらを記す。
私がやっているのは AI
私は、データ分析は日々やっているが、「人工知能」や「機械学習」をやっているつもりはなかった。ところが、先日ある本で、データ分析の一つの段階を次のように表していたのを読んだ。
Mapping business problems to machine learning tasks
ビジネス上の問題を機械学習のタスクに落とし込む
私のやっていることは AI なのだと気づく。
私が「人工知能や AI をやっている」という意識が低い理由は、私の大学卒論に関係がありそうだ。「人工知能」がテーマだったが、今やってるデータ分析とは全く違った。「機械学習」や「画像認識」の理論が中心だった。私が不真面目な生徒だったのもあるが、魅力的なテーマには思えなかった。その後の人生に影響を与えたのは、電算室での UNIX との出会いぐらいだな...(笑)
ブームといっても良い昨今の「人工知能」と、私の大学の頃の「人工知能」とは違う印象をずっと持っていた。今は「第三次ブーム」ということを本書で知って、その違和感に納得した。
とはいえ昔から共通してるのは、「人工知能」が誤解されていること。
エアコンや掃除機、洗濯機、最近では電動シェーバーに至るまで、世間には「人工知能」を名乗る商品があふれている。こういった技術は、「制御工学」や「システム工学」という名前ですでに長い歴史のある分野であり、これらを人工知能と称するのは、その分野の研究者や技術にも若干失礼だと思う。P.51
「温度を自動調節」とかを「エアコンが考えてる」かのような売り文句には、ウンザリするが、今後もなくならないだろう。そうやって「ロボット」「人工知能」は誤解され続ける。その内、ロボットや AI という用語の使用は規制されるだろう。「トクホ」みたいなヘンテコな認定団体が登場して...。「AI を認定」なんて変な話だけどね。
コンピュータが意識を持ちうるかとか、人間の思考がすべて計算なのだとしたら自由意志は存在するか(「自由」であることが介在する余地がない)といった議論もよく行われる。こうした議論は楽しいものではあるが、人工知能全体を概観するときには、あまり多く語る必要はないと思う。P.56
AI の日本語訳「人工知能」には異論はないが、誤解を招く表現でもある。これは私の解釈だが、AI を「人間をつくっている」と誤解している人が多すぎる。アニメや漫画、そして映画などの影響もあって、ロボットを「人造人間」とする傾向が強い、特に日本では。
人工知能の権威である著者ですら、自らの分野の予測は困難なのだ。
囲碁は、将棋よりもさらに盤面の組み合わせが膨大になるので、人工知能が人間に追いつくにはまだしばらく時間がかかりそうだ。P.80
本書出版から約半年後の 2015年10月 AlphaGo は人間のプロ棋士を下した。そして、2016年3月の AlphaGo versus Lee Sedol は記憶に新しい。
本書の唯一の収穫は、ディープラーニングと特徴量の関係。
ディープラーニングは、データをもとに、コンピュータが自ら特徴量をつくり出す。人間が特徴量を設計するのではなく、コンピュータが自ら高次の特徴量を獲得し、それをもとに画像を分類できるようになる。ディープラーニングによって、これまで人間が介在しなければならなかった領域に、ついに人工知能が一歩踏み込んだのだ。P.147
「パラメータ推定」の意味を知らない人が、本書の特徴量の説明で理解できるか不明だが、このディープラーニングのインパクトは絶大だ。インターネットの普及による、膨大なデータの蓄積もさらに、ディープラーニングを後押しする。
「携帯ショップはロボットで良い(にして下さい)」のように、私が危惧するのは、日本企業の AI への取り組み。KKD「勘、経験、度胸」 に AI が積極的に加えられているようには見えない。「おもてなし」と称した「過剰サービス」なビジネスは、とっくの昔に終わっているのに。
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