2024年5月30日木曜日

ぐるぐるまわるすべり台

ぐるぐるまわるすべり台

著者:中村航(なかむらこう)
発行:2004年6月1日初版
二つの物語が収録されているが、表題作より「月に吠える」の方が面白いと感じた。斎藤美奈子の「本の本」からの書評で期待したような「バンド活動もの」ではなかったのは残念。それでも面白ければ良いのだが、結局のところ最後まで、いまいち「前のめり」に読むことはなかった。

「そういう小説」と言えばそれまでなのだが、主人公が「もう読みたくない作家の作品の主人公」のように、「飄々」としている、もっと言えば「ジタバタしてる感が皆無」な様子に、少なくとも感情移入できなかった。「これが現代の若者」という定義にも反論したいし、私自身は「ジタバタしていた」(今も「ジタバタ」してるが多少は落ち着いた)のだ。

理科系っぽい組み立て方といったらいいのかな。変なたとえだけれど、彼は地動説な作家なのかもしれない。「本の本」P.197

確かに「理科系っぽい」記述(例え?挿話?)はあるが、「理科系っぽい」のは好きな私だが、ここでの記述は妙に「それ必要?」と感じた。「飄々として理科系」、この点だけでもキャラクター設定が「浅い」となった。あまりにもステレオタイプ的なのだが、そんな奴は現実には多くはない、少なくとも私の知ってる人にはいない。

批判ばかりしてるが、最後まで読ませる物語なのは確か。とはいえ、やっぱりこのタイトルのセンスは疑う(厨二病っぽい...)。ネタバレで恐縮だが、The Beatles の "Helter Skelter" を日本語訳したもの。私も大学生の頃(軽音学部員)、"Helter Skelter" の収録アルバム "White Album" は聴きまくった。

「あの頃はガキだったなぁ」と思い出しながらも、主人公と違って「飄々」となんてしていられず、「ジタバタ」しながら生活していた。「ジタバタ」したおかげで、今に活きる何かを掴めたと信じている。

大人になって、Blues などのルーツ音楽にのめり込むほどに The Beatles は聴かなくなった。バンドの選曲のために数曲は聴いたが、ここ何十年もアルバム全曲を聴いたものはない。本書で気づいたのは、私にとって The Beatles は大学時代とともに終わっていたことだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿