2024年11月15日金曜日

私にふさわしいホテル

私にふさわしいホテル

著者:柚木麻子
発行:2015年12月1日文庫初版(単行本 2012年10月)
映画化されるということで知った作品。予告編で残った能年玲奈と滝藤賢一の印象は、本書を読みながら、自分のイメージを邪魔することはなかった。むしろ「配役のイメージと違う」とさえ思って読んだ。

期待していた訳ではないが、かなり面白かった。最高の娯楽小説の一つになった。「出版業界を暴く」ような作品かどうかは知らないが、かなり「毒」を含んだ内容が非常に楽しい。

「配役のイメージと違う」と書いたが、たまに「能年玲奈」と被ってしまった箇所もある:
批判一つで何日も寝込んでいた昔の私はもう居ない。こんなことは人前では口が裂けても言えないが、世の中、売れたもん勝ち、いや、売ったもん勝ちだ。私は確かに高尚な人間ではないかもしれないが、努力は惜しまない。だから、きっと欲しいものは、この先も一つ一つ確実に手にできるはずだ。P.199

それは、主人公自体が「変化している」(演じている?)からかもしれない。

「出版不況」と叫ばれて久しいが、本当のところはどうなんだろう。「不況前」が実際は「売れすぎ」で、「今が普通」とも考えられないだろうか。本自体の面白さや役割は変わることはないし、読者数なんて劇的に増えたり減ったりするものではない。

不況であろうと、ベストセラーにならずとも、面白い本は溢れている。それは一生をかけても読みきれないほどに。

作家さんや出版業界に感謝するしかない。

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