The Greatest Night in Pop 監督:Bao Nguyen 公開:2024年1月29日 配給:Netflix 邦題:ポップスが最高に輝いた夜 |
かなり前のことだが DVD で We Are The World The Story Behind The Song を観たし、それ以前に TV 放送された奴(多分、小林克也がナレーションしてた)も観たことがあった。なので、今回はそれほど期待していなかったが、年月を経たこともあってか、当時の関係者のコメントなど含めて、非常に楽しかった。
レコーディングが山場なのだが、それ以前の「曲ができる前」からのエピソードも興味深い。これだけのミュージシャンを集めてのレコーディングなのだが、準備期間が非常に短い。そのうえ、携帯電話もインターネットも一般には普及していない時代...。
各ミュージシャンに配布された通知:
録音スタジオの場所が伏せられている。一般のメディアに漏れたら、騒ぎでレコーディングなんてできないことを想定しての配慮:楽曲のデモは「カセットテープ」で「FedEx 郵送」!!
当時を振り返った Huey Lewis のコメントが良い:
Sheila E は、コーラスのみでミュージックビデオからは目立った存在ではなかったが、このドキュメンタリーでは Prince のことなど、貴重なコメントが聞けた。「目立ってなかった」とはいえ、当時の私は Prince より Sheila E が「カッコ良いな」と思っていた。軽快な(ラテンの?)リズムをパーカッションを叩きながら歌う姿に見惚れた。
Pop の頂点?
"We are the World" の当時が、私にとって最も「リアルタイムの洋楽を聴いていた時代」。洋楽のテレビ番組は漁るように観ていた(ほとんどが深夜番組だった気がする)。「洋楽に浸り始めた初期」で、日本の音楽には全くと言っていいほど関心がなかった。
なので、この頃の音楽は、好みに関わらず多くの楽曲を覚えている。とはいえ、この嗜好は長続きしなかった。The Rolling Stones や Led Zeppeline など、私より前の世代のロックミュージックに浸り始めると「現世代の音楽がつまらない」と思うようになった。「70年代にリアルタイムで聴きたかった」とも思うようになり、つい最近までは「80年代の音楽はダメ」としていた。
今、こうやって"We are the World" のドキュメンタリーを観ると、「80年代の音楽はダメ」との意見は違ってくる。ある意味で ポピュラー音楽の頂点 だったのでは?と思えてくる。
ポピュラー音楽の誕生は諸説あるだろうが、ここでは1960年代の The Beatles としよう。その後、70年代、80年代を経て、90年代初めの MTV Unplugged で「ポピュラー音楽のトレンドは一周した」。これが私の見解。
その後の音楽は、どこかの時代のポピュラー音楽の「影響」を強く感じる。(奇抜な音楽もあるが、一時の流行で、長続きすることはない)。
とはいえ、これからの世代から「新たなポピュラー音楽の頂点」が誕生することは否定できない。否定はできないが、「有名ミュージシャン 45 名が一同に会してスタジオ録音」という状況は想像できない。「ネットでやれば良いじゃん」がまかり通るだろう。そうする方が、世界中からも多くのミュージシャンを集められる。
それで良いのか?
残念ながら "We are the World" の「熱量」に勝る作品は生み出せないだろう。このドキュメンタリーを観て更に確信した。短期間ながら前準備は周到だったが、多くが初顔合わせの 45 名のミュージシャンのレコーディングが順調であるはずはない。そんな状況下の録音を成功させた要因を考えるだけで、この出来事が「今となっては奇跡」と言っても過言ではないだろう。
Must be in a Dream, huh?
最後に、Bob Dylan ファンとしては書かずにはいられない。これも「奇跡」としか言えない。
当時はまだ Bob Dylan ファンでなかったが、「Bob Dylan が参加してるな」程度の認識はあった。ファンになってからは「Dylan、なんで参加した? みんなと一緒じゃ歌いづらそうやん!!」と同情すらおぼえた。Steve Wonder の生ピアノ演奏で「歌い方?」を模索中の Dylan:
ようやく「歌い方」を見出した後と思われる発言:Dylan のこの発言の真意は不明だがMust be in a dream, huh?
この言葉、この時のレコーディング自体を象徴している気がする。
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