前作:ペッパーズ・ゴースト
| マイクロスパイ・アンサンブル 著者:伊坂幸太郎 発行:2022年4月25日単行本初版 |
本作は、いつにもまして「何気ない物語だなぁ」と思いながら読んだ。とはいえ「変わった世界」が登場するなど、奇抜なストーリーではあるのだが...。
その「何気なさ」の理由は「あとがき」から推測できるかもしれない:
2015年、福島県の猪苗代湖を会場とした、音楽とアートのイベント「オハラ*ブレイク」が開催されることになった際、短い小説の執筆を依頼されました。その小説を、会場に来てくれた人に小冊子として配布したい、とのことでした。P.188
(略)毎年一回、「猪苗代湖の基地に侵入してはトラブルに巻き込まれるスパイ」や「就職し、会社員として苦労する若者」のことを、「今年はどうなっているのかな」と想像しながら書くのは、それはそれで新鮮な仕事でした。P.189
(略)また、「オハラ*ブレイク」は音楽イベントでもありますから、自分の好きなバンドやミュージシャンを関連付けた小説を書きたいとも思い、TheピーズとTOMOVSKYの曲を毎回、題材に使うことにしました。P.189
「歌詞がたくさん出るなぁ」との疑問も解消。Theピーズといえば『実験4号 後藤を待ちながら』、この「あとがき」で色々と解消した。
本書冒頭から「グライダー」が登場、次は Lawrence Block の「殺し屋」の投稿で引用した伊坂幸太郎の言葉:
まさに、「どうということのない話」でありながら、どこにもない小説となっている。「ストーリー」とは、読者を先へ先へと導いていくエンジンのようなものでもあるから、そういう意味では、ケラーシリーズは、エンジンを積まないグライダーとも言えるかもしれない(と譬えておきながら、僕はグライダーに乗ったことはないのだけれど)。(略)では、つまらないか?とんでもない!そのグライダーから眺める景色は、本当に素晴らしく、目的地に着くことよりも(あらすじを堪能するよりも)、その飛行を堪能することが幸せで仕方が無いのだ。そもそも、早く目的地に着くために、グライダーに乗る人なんているのだろうか。そのため僕は、ケラーシリーズを読んでいる際には、いつも決まって、「このまま、読み終わらなくてもいい」と感じる。P. 355
伊坂幸太郎の物語も私にとっては
「どうということのない話」でありながら、どこにもない小説
そして、本書を読んで「猪苗代湖に行ってみたい」となった。「九州を久しぶりに走りたい」との "Exploit(活用)"のマインドも悪くないが、未知の「猪苗代湖」という"Explore(探索)"マインドを奮い立たせてくれた本書であった。

0 件のコメント:
コメントを投稿