洋題:Tokyo Story
昨夜、黒澤明の「隠し砦の三悪人」を観たのでどうしても比較してしまう。そんなことは無意味だが、少しだけ書いてみる。
視点が違うだけかもしれない。小津が描くのは、あまりにもありきたりな日常であり、家族愛が主要なテーマ。黒澤の時代劇は、スケールの大きな人間ドラマ。どちらも時代を超えた普遍的なテーマを鋭く描いている点では同じ。
むぅ、ここまで書いて、やっぱり比較論は無意味と自覚。どちらの監督作品も僕は大好きです。
本作品のプロットは、笠智衆(りゅうちしゅう)演じる老夫婦が、広島県尾道から息子と娘が暮らす東京へ訪問、既に自らの生活を営んでいる子どもたちと、第二次大戦で戦死した老夫婦の息子の嫁とこの老夫婦との関係が淡々と描かれていく。
何てことない話しかもしれないが、今の時代でも決して変わらないテーマが、じわぁ~と心に沁みこんで来る。相変わらずの小津マジック。
本作品にも誰が悪い、誰が良いという主張は無い。一見して、老夫婦を疎んじるような実の子どもが悪く、実の子どもではない息子の嫁が良いように思うが、誰もそれを指摘しないし、良いと指摘された本人も「私ずるいんです」と反論する。
非難の先に解決はないのだと思う。相手を罵倒するような役柄を決して想像できない笠智衆を使う小津の配役が、全てを物語っているように思う。
それでも、下世話ですが、僕は原節子は大好きです。老夫婦の息子の嫁を演じるが原節子が、笠智衆に「私ずるいんです」というシーンは、全ての登場人物の罪?を消し飛ばしてしまった。
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