洋題 Throne of Blood
海外向けのタイトルは、「蜘蛛の巣城」の Spider Web Castle ではないようです。「血の王位」とでも訳されるのかな(ちょっと難しい訳です)、シェイクスピアの戯曲「マクベス」を戦国時代に置き換えたものなので、的確な洋題かもしれません。残念ながら「マクベス」は読んでいないのですが、一説では原書「マクベス」の雰囲気を最も忠実に再現していると、日本による翻訳ながら高い評価のようです。
本作品は「七人の侍」から次々回の三年後の公開、その後の「隠し砦の三悪人」や「用心棒」「椿三十郎」と比べて、シェイクスピア戯曲を原作としている為か、単純な娯楽性よりも重厚で深みのある作品に仕上がっています。しかしながら、「娯楽性」の解釈にもよるので、この比較もビミョウではある。
重厚な雰囲気は他の作品よりも圧倒的にあるのは確か。テーマがテーマだけに軽くはならないのだが...。かといって「重厚な雰囲気で色々と考えさせる映画」という評価でもない。多くのこの手の映画はそうかもしれませんが、そこは黒澤映画、やはり高いエンターテイメント性に脱帽します。
何といっても圧巻なのはクライマックスの大量の弓矢の攻撃に逃げ惑うシーン。
凄いなぁ、特撮だろうなぁ。
CGも無い当時にどうやって撮影したのだろうか?
と関心していたら何と特撮では無かったのでした。つまり実際に弓矢は放たれていたそうです(知ったとき「えぇ!!凄い...」と言葉を失いました)。勿論、弓を放つのは相当な弓矢の名人だったようですが、それでも信じられない話です。何百という放たれた弓矢が三船の身体スレスレをかすめて飛ぶのです。弓矢による「蜂の巣」ギリギリです。
「俺を殺す気かっ!」
その三船敏郎は珍しく殿様役ということで、これまでの三船とはまた違う役作りをしているようです。常に睨み(凄み)を利かせたその表情は、あらゆるシーンで全く隙が無く、この映画を象徴しているように思います。どのカットも「絵になる表情」で、それは驚異的ですらあります。
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