2011年2月12日土曜日

晩春 (1949 JPN Movie)

監督:小津安二郎
洋題:Late Spring

原節子の魅力が爆発している映画だと思う。

まずは前半の無垢なまでの笑顔に引き込まれる。再婚した叔父に向かって「おじ様は不潔よっ!」というシーン、仮に私がその叔父であったとしても、彼女のその言い方や表情に魅了され、決して腹立たしくならないだろう。むしろ劇中の叔父のように喜ぶかもしれない。東京物語の「私ずるいんです」の原節子をすぐに思い出した。

しかし後半の彼女は、豹変した表情を見せる。原節子演じる紀子が父から嫁ぐことを求められ、そして父の再婚の意思を知ってからの怒りの表情は、鬼気迫るものがある。引き込まれる笑顔と同じくらいに、引き込まれる怒りの表情。

そんな原節子に魅せられる映画なのだが、物語の中核部分、つまり

あたし、このままお父様といたいの、どこへも行きたくないの
このままお父様と一緒にいるだけでいいの。

と紀子が嫁ぐことを拒むあたりから、この物語の理解に苦しむようになった。

これまで観てきた小津安二郎作品はもっと分かり易いというか、「う~ん、深いなぁ~」と関心しながら観ていた。本作品はそれが、「こんなことってあるかな?」という疑問がどうしても払拭できない。何か居心地が悪いような気分で観ていた。実際にこの父娘の描写は「壷のカット論争」にあるように、色々と騒がれている。

ところが、そこはやはり小津マジック!! 終盤の(その「壷のカット」がある)旅館シーンから、最後のカットで笠智衆演じる父が剥くリンゴの皮が落ちるまでを観終わったとき、その居心地の悪さはどこかに消えて、「あぁ、良い映画やなぁ~」とマジックにかかってしまっているのである。「あっぱれ小津安二郎!!」と叫びたくなるほどに。

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