原書:How Google Works(2014年9月23日発行)
もしかするとそのリーダーはこの本を手にしているかもしれない。そして私たちのアイデアをもとに、いずれグーグルを蹴落とすような会社をつくるかもしれない。バカげていると思うだろうか。しかし永久に勝ちつづける企業はないことを思えば、これは必ず起こる。ぞっとする話だと思う人もいるかもしれない。私たちはワクワクしている。P.357
Google の取締役会長とCEO 共著の本書は、上記の一節終わる。私は、少なくはない数の経営者や大企業の幹部に出会い、時には仕事をご一緒したが、このようなことを口する人に会ったことはない。
本書は、今まで読んだ会社経営本の中で最も有益な本となった。去年、Starbucks のCEO の「スターバックス再生物語」を楽しんで読んだが、実は「違和感」の方が大きかった。会社経営の本なのだが、どこか「ドラマチック過ぎる」展開ばかりで、経営に関しても「愛情をそそぐ」ことばかりが主張されて、若干シラケた。
本書は、そんな「スターバックス再生物語」で抱いた違和感は微塵もなかった。そこには、「愛情」を超えた「会社経営において、イノベーションの情熱を奮い立たせる方法」が、とても具体的に記されている。多くの人が理解し納得することだろう。問題は、実践するかしないか...。
Google の誕生から成功までの背景は、Steven Levy の見事な著書「グーグル:ネット覇者の真実」で知った。Google社員ではない外部による著書であり、本書のような経営に関する本ではないが、本書の内容と重なる点は多い。あわせて読むことをお勧めします。
本書については、「PowerPoint Is Evil:パワーポイントによる死」「メール返信の心得:OHIO」で触れているが、ここでは主に Google が考える「人材」について書いてみたい。
エリック・シュミット ジョナサン・ローゼンバーグ アラン・イーグル
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エンジニアと話してこいよ
数年前、「MBA的なことを(財務、経営分析、など)」を学んでいる最中、「ゲーム理論」に魅了されたのをきっかけに、統計学やデータ分析に没頭することになった。もう「MBA的なこと」なんてやる気が失せてしまったのだ。面白くなかったのではなく、私には「実践的ではない」と思えたから。「グーグル:ネット覇者の真実」で記した、以下が私の想いを簡潔に言い表している。
MBAがもたらすとされる「グーグルらしくない」スキルとは無縁の世界だ(P.249からの引用)。MBAも「インターネット精神」とあまりフィットしない、エンジニアリングの方が圧倒的にフィットする「グーグルらしい」ということだ。
本書でも「MBA批判」(というか「MBA嫌い」?)のくだりは非常に面白い。「Googleらしさとは?」をイメージするには「脱MBA」と考えると分かりやすい。
ラリーとセルゲイはグーグルをいくつかのシンプルな原則にもとづいて経営していたが、そのうち最も重要なのが「ユーザを中心に考えること」だった。最高のサービスを生み出せば、お金は後からついてくると信じていたのだ。(略)口先だけで人材がすべてだと言う企業は多いが、ラリーとセルゲイはそれを本気で実行した。P.18
上記は「はじめに」の章から引用。これだけでも Google の経営の姿を想像できる。
「エンジニアと話してこいよ」の「エンジニア」を技術者ではなく、財務や人事も含むスタッフも含めて、「現場の連中と話せ」と理解している。更に
ラリーの言う「エンジニア」は、従来型の定義に当てはまるような存在ではないのだ。P.21
そもそも多くの場合、役職や肩書きなんて、本人の可能性や能力を縛るものだと改めて思った。エライ人だからって、顧客に最良のサービスを提供できとは限らないのだ。そのエライ人は、会社にとって「どう機能しているか」を覆い隠す肩書きなんて害でしかない。
どびきり高性能のルータ
本書内で引用された数多くの示唆に富む言葉をはじめ、本書から引用したい言葉や、取り上げたいテーマはあるが、ここでは「はじめに」続く章「文化:自分たちのスローガンを信じる」から取り上げる。
オフィスのカバ (Highest-Paid Person's Opinion:一番エライ人の意見)も、危険な存在だ。(略)残念ながら、経験イコール説得力のある主張とされる企業が多い。能力ではなく、勤続年数で権限が決まるこうした会社は「勤続年数至上主義」とでも呼ぶべきか。P.64
ピラミッド型の体制を、ピラミッドの頂点の役職にいる二人の著者が明確に否定している。本書を読めば、この主張に自己矛盾はない。
オフィスのカバに耳を貸すのをやめると、能力主義が浸透する。(略)「『誰のアイデアか』より『まともなアイデアか』が重視される職場」。(略)能力主義を根づかせるには、カバ一匹で組織を言うなりにできる人間と、分をわきまえないヤツと批判されるのを恐れず、守るべき品質や価値のために立ち上がる勇気あるスマート・クリエイティブの両方が、それぞれ役割を果たす必要がある。 P.64
「能力主義」「成果主義」とか、日本の人事は「流行に左右」されてきたように思う。挙句には「能力主義は日本に馴染まない」と、某大手メディアや雑誌は吹聴する。「会社経営の仕方に流行がある」と考えるのは幻想だ。「法人」とはよく言ったもので、会社も「人」なのだ。十人十色のごとく、会社も各社同じではない。「流行に左右」される経営に未来はないだろうし、そんな会社に「哲学」はない。
「マネジャーは肩書がつくる。リーダーはまわりの人間がつくる」P.73
最高の経営システムは、アンサンブルを土台にしている。スーパースターの共演というより、ダンスチームのパフォーマンスに近い。(略)チャンスがあれば誰でもリーダダンサーを務められるシステムのほうが、組織は長期的に安定する。P.74
「リーダー像」については色々言われるが、私の描くリーダー像も本書の通り。本書にある「どびきり高性能のルータになれ」は、著書「人工知能ってそんなことまでできるんですか?」で知った「bwtweenness:中心的存在 = リーダー」を思い出した。
会社が持つべき「哲学」て、実はとてもシンプルなもの。そんな哲学が「あるかないか」は、その企業は今後長期間「生き残るか否か」とイコールだろう。Google のようにスマート・クリエイティブな人材を豊富に抱える企業は多くはない。その事実を分かった上でなお、私は本書の「経営哲学」は多くの企業に適用可能だと信じている。究極的には、私一人でも実践するつもりだが、願わくばそんな企業を作り上げていきたいものだ。
ロックバンドで長くはない活動をした私だが、たかだか5名のバンドメンバーの集団であっても、やっていたことは Google 的なことだった。楽しくもあり、自分たちができる限りのクリエイティブな音を出せたと、今でも思っている。会社とバンド活動を、無邪気に同じものとは考えないが、大切なエッセンスは同じなのだ。



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