2021年11月19日金曜日

歌うクジラ


歌うクジラ

著者:村上龍
発行:2013年10月16日文庫版初版
        (2010年10月26日単行本)
本書を初めて手に取ったのは、「半島を出よ」を読んだ2011年から数年後のこと、冒頭の数ページを読んで、それ以上は読み進められなかった。面白くなかったというより、当時は「小説を読めない」時期だったのが主な原因(その後、伊坂幸太郎の「フィッシュストーリー」で「小説読めない病」から脱した)。

愛と幻想のファシズム」「希望の国のエクソダス」よりもさらに遠い未来を描いた本作、読み始めて直ぐに感じるのは「村上龍、また新しい試みをしてるな」ということ。具体的には説明しないが、著者の作品の特徴と思ってる「緊張感とサバイバル感」を最大限にする試み、という感じ。

一字一句、いつものスローリーダーで読んだが、無意識に結構な良いリズムで読み進められた。とはいえ読了に要した日数は長かった、もちろん楽しめた日々だった。

先日のツーリングにも本書を持参して、宿泊先でも読み耽った。その時に読んで印象深ったのが
SW遺伝子を注入され、細胞再生や臓器移植などあらゆる先端医学をロボットにインプットした最上層の人々が、ひどくありふれた床ずれに対応できないのは、最悪の皮肉かも知れないわね。下巻 P.167

これが本書のメッセージと言うつもりはないが、「サバイバルの対局にあるもの」という気がする。

オートバイで山の中をかっ飛ばしてる旅では、「サバイバル」つまり「生きること」を普段の生活より意識することになる。そんな中で読む本書は格別だった。

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