2022年4月16日土曜日

殺しのリスト

前作:殺し屋、次作:殺しのパレード
殺しのリスト

原題:Hit List
著者:Lawrence Block
訳:田口俊樹
発行:2002年6月25日初版

「殺し屋ケラー・シリーズ」の二作目。

序盤はイマイチ感があったが、徐々に面白くなった。短編集のように読みながらも、最終的には長編になってるのが興味深い。伊坂幸太郎の短編集でも感じることだが、本作は主人公が同じなので、より「長編」らしい。

一般的な「殺し屋」の物語がどういうものか知らないが、本書は「一般的な殺し屋の物語」ではないのかもしれない。それほど多くない「殺すシーン」を除けば、大方描かれているのは「普通の生活」なのだ。

そんな「普通の生活」を面白く読めるのは、筆者の力量以外の何ものでもない。

それに引き換え、ヒーローのほうは完璧すぎて、リアリティがなかった。疾病対策センター勤務の科学者である妻が研究所のハムスターから伝染病に感染して死ぬと、そのヒーローは妻の死を雄々しく嘆き悲しみながらも、男手ひとつで子供たちを育てる。財務省の秘密部門の依頼を受けた事件の捜査も市、隣に住む老婦人の庭仕事も手伝い、子供たちの宿題を見てやったりもするのである。出会う女はひとり残らず彼とベッドをともにしたいと思うか、あるいは母親役を務めたいと思うか、その両方。誰もが彼に夢中なのだ、ヒロイン以外は。

それにケラー以外は。その理由は言うも愚かだ。白馬に乗った騎士に興味はない。P.345

そう、主人公のケラー自身が認めるように、分かりやすい「ヒーロー」からは程遠いのがケラー。

ケラーにわかったことがひとつあった − この男が切手蒐集家でないことは喜ぶべきことだ。P.514

趣味が切手蒐集の「殺し屋」なんて「ヒーロー」っぽくないが、意外と「現実の殺し屋」もそんな感じなのかもしれない、と想像してしまうのも、筆者の上手さなのだろう。

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