The Queen's Gambit 著者:Walter Tevis 発行:2014年版(初版:1983年) |
日本語訳を読んでいたので、比較的スラスラと読んでしまった(妙に多い気がするフランス語起源の英単語には苦労したが...)。日本語訳が良いのもあってか、翻訳版とほぼ同じイメージを抱きながら読んだ。
Beth's Gambit
Queen's Gambit が「チェスのオープニングの定跡の一つ」であることは、チェスのルールを知らなかった私も、本書(厳密には翻訳本)で理解した。しかし、主人公が女性であることから、物語のタイトルとして「別の意味が込められている?」と想像した。
時代背景は、明らかに現代ではなく「米ソ冷戦・東西冷戦」の頃で、現代よりも「男社会」であり、何らかの規律(例えば、キリスト教)が重んじられる社会や環境。そんな中で「チェスの天才少女」として活躍する物語。gambit の意味、そして queen を主人公の Beth Harmon と見なせば、自ずとタイトルに込められた意味が想像できる。
gambit の辞書的な意味:
「気になるのは私ぐらい」なことを記す。
先に書いたように、物語が「いつの頃」とはっきり分からないが、Beth がチェスをするために高校に連れられて行った際にヒントがある:
It was a big classroom with three blackboards across the far wall. Printed in large capitals on the center board was WELCOME BETH HARMON! in white chalk, and on the wall above this were color photographs of President Eisenhower and Vice President Nixon.
When they had finished, he said, “You are eight years old?”Beth は9歳、そしてモスクワでの Luchenko との会話:
“Nine in November.”
He nodded. “You will be here next Sunday?”
“Yes.”
“Good. Be sure.”
He looked at her thoughtfully for a moment. “You are nineteen?”
“Yes.”
この物語は 19歳 の Beth で終わる。
高校にチェスをしに行ったのが Eisenhower 任期終わりの1960年と仮定しても、1970年までの出来事が物語の時代背景。
このように、何年の頃か知りたかった理由は次:
She shook her head to clear it. The game had not gone that far. They were still playing out tired old moves and the only advantage White had was the advantage White always had—the first move. Someone had said that when computers really learned to play chess and played against one another, White would always win because of the first move. Like tick-tack-toe. But it hadn’t come to that. She was not playing a perfect machine.
ポイントだけ訳すると:
コンピュータがチェスをするようになると「白」(先行)が常に勝つ。まだその時代は来ていない。
私は機械学習(AI)を仕事にしてるため「その手の本」を読んできたし、ブログにも色々書いてきた(例えば:明るい未来:最強なのは AI でも人でもない)。最近の本には取り上げることが少なくなったように思える「コンピュータがチェスで人に勝った」話題は、何度も本で読んだ。つまり:
当時の世界チャンピオンの Garry Kasparov とコンピュータとの第一戦が1996年、コンピュータが勝利した第二戦が1997年(ディープ・ブルー対ガルリ・カスパロフ)。
本物語の時点の1970年、そして本書初版の1983年の時でさえ、10年以上待つことになる。
1980年代初頭、どれだけの人が「コンピューターがチェスのチャンピオンに勝つ」ことが想像できただろうか。こうやって a perfect machine を物語の一文に入れた著者の想像力に感心してしまう。「宇宙旅行が気楽にできる」「車が空を飛ぶ」などを想像することは容易なのだが、近い将来に現実になるものを想像するのは、意外と難しいものなのだ。
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