それってどうなの主義 著者:斎藤美奈子 発行:2007年3月20日第二刷(初版2007年2月20日) |
本書「あとがき」(P.365) によれば、著者が1998年から2004年にかけて雑誌や新聞などに掲載されたエッセイのようだ。
「無菌で無害」の誤り
「抗菌グッズなんかいらない」(P.124)から:
抗菌、けっこうなことじゃないかと思うかもしれないが、私は素直に歓迎できない。人間関係の中にも「抗菌観念」が入り込んではいないかと心配になるからだ。(略)抗菌という概念は、有害無害にかかわらず、異質物をあらかじめ排除する思想である。(略)逆にいうと、少しでも異質なところがある子どもは(もちろん大人も)、異物として排除されやすいということである。人間の身体なんて、もともと雑菌だらけなのである。多少のバイ菌如きでガタガタ騒ぐんじゃねえよ、と「ばいきんまん」のような気持ちで私は考えるのである。(『新潟日報』1998年11月12日)
2023年現在、「人間関係の中の抗菌観念」は「増殖の一途」と感じる。本書の当時と比較しても、ソーシャルメディアの台頭は「抗菌観念」を後押しただろうし、”hygiene”(ハイジーン、衛生)観念は「抗菌観念」のそれ以上ではなかろうか? 先日の大阪出張で、少し時間に余裕があったので、普段は立ち入らない「商業施設ビル」に行った(仕事できる場所を探したかった)。綺麗すぎて、匂いが人工的すぎて、来店してる客が鬱陶しくて、すぐに退散。結局、顧客の会社近くの喫茶店に戻ることにした。
会社では、私は「異端」の自覚がある、つまり「異質な存在」。先月「無菌(と自認しているであろう)社員二人」と話して、余計に「自分の異質さ」を痛感。そこで気づいたのは「毒にも薬にもならない存在」は「害でしかない」こと。その存在は「無菌で無害」とされやすいが、とんでもない「害」であり「悪」なのだ。そのおかげで「悪いこと」が数週間前には発生。「それってどうなの」とつぶやく以前に「お前ら何やってんやっ!」と怒鳴った。奴らの行動は「何も行動しなかった悪」なのだ。
久しぶりの和製英語
「環境ホルモンとミサイル」(P.255)、そういえば「環境ホルモン」て何だったんだ? 引用されてる立花隆『環境ホルモン入門』から「あぁ、精子の数が少ないとかいう話」だっと思い出した。
内分泌攪乱化学物質、外因性内分泌攪乱物質などとも呼ばれる。日本では、かつては後述のように、マスコミ向けの造語として用意された環境ホルモンもよく使用されていたが、environmental hormone は、それを直訳した和製英語であり、英文の論文でこの言葉を使っているのは、ごく一部の日本人研究者だけである。Wikipedia
” environmental hormone”!!「和製英語」だってよ(大笑)。「ごく一部の日本人研究者だけ」って(笑)
立花氏をはじめ、誤った情報を流して、その後の訂正はない。いい加減な報道、つまり過剰に「煽って」、それが誤りだったことの報道はない。あったとしても「ごく小さく報道」。「それってどうなのよ」とつぶやきたくなる。実際「それってどうなん?」と発していた。そんなツッコミを入れたくなるから、私は日本のメディアを可能な限り無視してるのだろう。
思考放棄
次は「それってどうなの主義」宣言から:
「それってどうなの主義」とは、何か変だなあと思ったときに、とりあえず、「それってどうなの」とつぶやいてみる。ただそれだけの主義です。つぶやいたところで急に状況が変わるわけでも、事態が改善されるわけでもありません。それでもこの「つぶやき」には、ささやかな効用があります。P.1「それってどうなの主義」とはすなわち、違和感を違和感のまま呑み込まず、外に向かって内に向かって表明する主義。言い出しにくい雰囲気に風穴を開け、小さな変革を期待する主義のことなのです。「それってどうなの」に大声は似合いません。小さな声でぼそぼそと、が効果的。ではみなさん、小さな声で唱和してみましょう。それってどうなの?P.3
2007年に書かれた「あとがき」には
10年前と比べると、さわらぬ神に祟りなしというか、長いものには巻かれろというか、ものが率直に言いにくくなってるな、という気がしてなりません。P.366
それから約15年後の現在、状況が良くなったと言えるだろうか?
「それってどうなの」とつぶやくには「考える」ことが前提。また「それってどうなの」は疑問を呈する行為であり、対象に対しての理解、つまり「それはどういうことなのか」を分かる必要がある。「考える」「分かる」という行為が、早々に放棄されることが多くないかと感じる。「議論を深めない」とも言えるかもしれない。
その割には「多様性を重視・尊重」とか言う輩も増えた。その「多様性とやら」を尋ねても、「それって、他の意見を看過してるだけで、多様性の重視ではない」と言いたくなる。面倒くさいから言わない。言っていた時期もあるが、理解してもらえないし、そもそも相手が理解する気がないのだ。
数年前、自宅近くの駅近くの飲み屋で、同僚二人と飲んだ。一人は2年目の新人、もう一人は「その上司」(私の当時の営業担当)。その新人に対して「思考停止してんなぁ!」と言ったら、その上司は「思考停止ではなく "思考放棄" なんですよ」と。その発言は無関係だと思うが、その翌日から新人は会社に来なくなった(笑)
「思考放棄」、マジかよ...(泣)
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