2024年9月21日土曜日

(再読)グラスホッパー

前作:チルドレン  次作:死神の精度
 
グラスホッパー

著者:伊坂幸太郎
発行:2010年5月15日24刷、初版2007年6月25日(単行本:2004年7月)

2018年1月に初めて読んで記した感想:
デビュー作の「オーデュボンの祈り」から順に本作まで+αの著者の作品を読んできたが、面白さのランキングでは本作が最下位。つまらないのではなく、著者の他作品との比較の上での最下位。面白くなければ、本を最後まで読まない私なので、楽しみながら最後まで読んだので、面白い本であるのは間違いない。

なかなか厳しいこと書いてるなぁ、と今では思うが、そういう感想を抱いたのも理解できる。

伊坂作品の中でも「不気味」な印象がかなり強い。しかし「不気味すぎて読み進められない」ほどではない。「意図的に、そういう描写にしているのだなぁ」と理解できる。

今回は「本書は最下位だ」とは思わず、いつも以上の疾走感であっという間に読み終えた。序盤の話を、これまになく鮮明に記憶していたが、幸いにも今回も都合よく、結末をまったく記憶していないので、最後まで十分楽しめた。

「ブライアン・ジョーンズ や ジャック・クリスピンのこと」は前回記したので割愛。

伊坂作品には「本を読んでる登場人物」、あるいは「本からの引用を語る人物」などが登場する。本を読んでる人は、小説中の人物であっても、どこか魅力的だ:
しばらくして歩きはじめ、内ポケットに手を入れた。よれよれになった文庫本を触る。
(略)
巨大な蕨(わらび)さながらの背高の街灯の下で、文庫本を開く。精神を落ちつかせるには一番効果がある。P.318

偉そうには言えないが、「精神を落ち着かせる」には「読書は最適」に完全に同意。特に、面白い小説の場合、どっぷりと小説世界に浸り「時間を忘れる」、その結果、気分は落ち着く。何なら肉体的な疲れも軽くなった気がする。

この登場人物「鯨(くじら)」が常に持参している文庫本からの引用はあるようだが(読んだことがないので...)、題名は直接的に言及されていないと思う。しかし次で分かる:
(略)「その本って、題名を逆さに読むと『唾(つば)と蜜(みつ)』になるんですよ」と上擦った声で、まるでそれだけは伝えておかなくてはならない、という使命すら帯びているような口調で、言った。
鯨は顔をゆっくりと上げ、文庫本のタイトルを見つめてから、なるほど、と思った。
「気がつかなかった」P.35

この場面、鯨が「自殺させてるシーン」なんだよな...。

日本の古典文学には興味がない(以前はあったが、今はない)が、海外の古典文学には興味が湧いている。まずは日本語訳で読む予定。「題名を逆さに読むと『唾(つば)と蜜(みつ)』」の本も、確かに読んでみたい。

フィクションである人物から、こんな風に影響を受けるのも悪くない。「確かに、それは楽しそうだな」と、ヒントを貰えたような喜びも小説を読む楽しさなのかもしれない。

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