2024年10月23日水曜日

国破れて著作権法あり 誰がWinnyと日本の未来を葬ったのか

国破れて著作権法あり 誰がWinnyと日本の未来を葬ったのか

著者:城所岩生
発行:2023年3月16日初版
先月、Podcast の番組で「Winny」「金子勇」と耳にして、「あぁ、あったなぁ Winny ...」と思い出して少しネットで調べた。2013年に亡くなっていたことさえ知らなかったほどに、本件については無知だった。ドラマ化もされて、それを観る前にこの「事件」について知りたくなり本書を手に取った。

Winny 事件」に絞った内容を期待したが本書は違った。その内容を期待するなら、本書で数多く引用されている『Winny: 天才プログラマー金子勇との7年半』が適切だろう。

P.257 にあるように「本書が提言したいこと四点」は以下の通り:

 1. アミカスブリーフ
 2. 審議会の委員を中立委員のみに絞る
 3. 取調べに弁護士の立会いを義務づける
 4. 日本版フェアユースを導入する

上記のことは未だに実現されていないようだ。Winny 事件当時、これらが一つでも二つでも存在していたら、金子氏の運命も、日本のソフトウェア産業も変わっていたかもしれない。「歴史にもしもはない」のだが、そのことを想像せずにはいられない。

インターネットの黎明期から私はソフトウェアエンジニアをやってきた。昔は「ソフトウェアエンジニアはエンジニアではない」と言われるような境遇も味わった。日本がディジタル産業で世界に遅れを取ったのは明らかで、私はその理由を、日本は
ハードウェア(製造業、モノづくり)重視で、ソフトウェアを軽視。社会的にも情報システムへの理解が低い。 
と考えていた。

本書を読んで、それだけではなかったようだ。特に著作権法で「がんじがらめ」な状態は、自由なインターネット空間と相性が非常に悪い。米国の「フェアユース」のことは知っていたが、インターネットやディジタル産業へのインパクトの大きさを改めて知った。

「村井純」の名前は久しぶり。Winny 事件で京都地裁で証言した村井:
証言前の打ち合わせで、ソフト開発者を著作権侵害の幇助罪に問う検察の主張に対して村井氏は、「その理屈だったら、日本にインターネットを引いてきた俺が幇助じゃん」と述べている。わが国の司法は「日本のインターネットの父」ですら犯罪者にしかねないのである。P.75

「著作権など無視して自由に何でも作ろう」と極端なことを主張したいのではない。技術の進歩の過程においては、過去に制定された法律が、その進歩を遅らせる可能性があることを言いたい。Winny 事件が正に多くを語っている。


日本の刑事司法は中世

「有罪率 99.9%」という言葉を耳にしたことがあるだろう。つまり、起訴された場合はほぼ確実に有罪になってしまう。「なぜこんなにも高いのか」の理由は様々だが、先に挙げた四つのうちの「取調べに弁護士の立会いを義務づける」ことがなされていないから。つまり「自白」が裁判で有効視され、「自白の強要」が結果的に「常態化」してる可能性があること。

次は本書「2-5 えん罪を生む悪き取調べ」、『Winny: 天才プログラマー金子勇との7年半』の「6. 協力?凶力?」からの引用で金子氏の発言:
「いやー、天下の警察・検察が署名しろと言ったから、まぁそういうものかと思ったんですよ。ちょっと協力的すぎましたかね。ハハハ」P.62

金子氏の行動を「軽率」「思慮が足らない」と言う勿れ。
こうした日本の刑事司法には国際的にも批判が絶えない。2013年、国連拷問禁止委員会でアフリカの委員が、「日本の刑事司法は中世」と指摘。その時の日本の人権人道大使の過敏な反応も手伝って話題を呼んだ。P.116

「その時の日本の人権人道大使の過敏な反応」は「非常に日本的な人」で笑ってしまった。「小池振一郎の弁護士ブログ」で読めます。

ちなみに「弁護士の立会い」は未だに不可能のようです:

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