2024年12月7日土曜日

(再読)砂漠

前作:魔王、次作:終末のフール
 
砂漠

著者:伊坂幸太郎
発行:2018年10月20日初版第12刷(2017年10月15日初版第1刷)

次は、西嶋が高校生の頃に万引きで捕まった後:
「家裁の調査官が変な調査官でしたけどね、教えてくれたんですよ」
「何を?」と僕は訊き返す。「何を?」と東堂も言葉を重ねた。
「才能のある人間ほど虐げられる」
(略)
「それからね、本をもらったんですよ、本を。家裁の調査官から、サン=テグジュペリのね、文庫本をもらったわけでね」と言い、その本の名前を言うが、僕も東堂も読んだことがなかった。「それが?」と訊ねてしまう。P.280

この「家裁の調査官」は明らかに『チルドレン』陣内。この点を、「陣内ファン」の私が今回初めて気づいたのは、本書(新潮文庫版)を最初に読んだのが2017年3月末、姪っ子の影響で「発売順に読む」ルールを変更して読んだ。『チルドレン』最初に読んだのが2017年12月なのだ。ちなみに「サン=テグジュペリの文庫本」とは人間の土地』と思われる(本書P.501<参考・引用文献>)。

伊坂本を再読してるが、これまでのところ、物語の展開を「ほぼ忘れている」、都合の良いことに「オチ」すら忘れている。本書は「その例外」っぽい。前回はかなり一気読みしたのだが、物語の流れを驚くほど覚えていた。「オチ」も何となく覚えていた、というか「イメージ」が描けた(「白いセドリック」が飛んだイメージ、など)。

人の記憶って、言うほど「ちゃんとしてない」と改めて感じる。忘れているであろうことを覚えているし、覚えているであろうことを忘れる。ただし「記憶の定着のさせ方」は、何となくだが「あるような気がする」今日この頃...。

とはいえ面白い物語なので、今回も「現実逃避」するかの如く本書に没頭した。

次は斎藤美奈子の『文芸誤報』から:
(略)物語は彼らが大学を卒業するところで唐突に終わっている。
もしかして本作は、これからはじまる壮大なロマンのほんの序奏、キャラクター紹介にすぎないのではないか。伊坂幸太郎がそのくらいの構想を持っていても、おかしくはないのである。「ズッコケ三人組」の、いや中上健次の向こうを張る東北サーガの予感。『砂漠・パート2』がやがて書かれるであろうことを勝手に予言。P.113

私には「唐突に終わった」感はなかった。再読した今回も同様。次は卒業式での学長の台詞:
「学生時代を思い出して、懐かしがるのは構わないが、あの時は良かったな、オアシスだったな、と逃げるようなことは絶対に考えるな。そういう人生を送るなよ」P.496
ここからも、「この連中の物語はおしまい」と比較的スッキリした印象。ただし、斎藤美奈子の予言するように「パート2」ではないにしても、登場人物の「その後」を中心とした物語は期待する。特に期待するのは「西嶋物語」!

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