Anora 脚本:Sean Baker 監督:Sean Baker 公開:2024年10月18日USA(2025年2月25日JPN) 邦題:ANORA アノーラ |
「ウォール街の狼」と呼ばれる実業家と売春婦が出会い、次第に惹かれ合う姿を描いたアメリカ的シンデレラストーリー。
本作の主人公 Anora "Ani" Mikheeva は売春婦ではなく stripper(ストリップダンサー)で、「金持ちと出会う」という設定ぐらいしか『プリティウーマン』と似てないのだが、どうしても想起してしまう。
当時『プリティウーマン』は大衆に受け入れたのだろう。私はテレビ放送の「日本語吹き替え版」をダラダラと観た記憶しかない。「いわゆる、シンデレラストーリーなのね」という感想。「ラブコメ」とも言えるかもしれない。
本作 "Anora" も「ロマンティックコメディ映画」(と Wikipedia にある)。確かにコメディ要素は満載。特に、米国作品にありがちなのだが、米国にいるロシア人を描き方は「コメディちっく」になりがち、実際にもそういう意図の演出なのだろう。現実はどうか知らないが、ロシア人がロシア語で米国で「ジタバタ」する姿は、彼らが真剣であるほど笑えてしまう。逆に「ロシアのアメリカ人」をロシア人が描くとどうなるだろうか? 興味深いが、「今のロシア」でアメリカ人が自由に過ごせる気がしないので、そんな描写は難しいだろうな。
ネタバレはしたくないので、詳細には触れないが、とにかく本作は楽しい。ロシア人が登場した時点で、既に面白い予感はしたが、予想通りだった。
しかし、本作を単に「ロマンチックコメディ」と片付けられない。『プリティウーマン』から30年以上が経った現在、「ロマンチックコメディ」の描かれ方も変化するのだ。
個人が他人に対する「想い」と「その表現の仕方」は様々で、何が正解なのかは、それこそ「組合せの数」以上に存在するのだろう。本作でも「誰に感情移入するか」で見方は変わる。作品のエンディングで「あぁ、良い映画だったな」となる瞬間は楽しい。幸福感を感じる瞬間とも言える。本作もそんな作品のひとつ。
本作の印象的なシーンの一つ:
先日のアカデミー賞で5部門(作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞、編集賞)を受賞したのは驚きだったが、嬉しくもあった。受賞スピーチで印象的だったのが、監督・脚本・制作の Sean Baker の「本作が independent film」であることを強調していたこと。本作の製作費が $6 million、A Complete Unknown が $50–70 million、なので 10 倍ほどの「低予算」。
「お金をかければ良い作品ができるとは限らない」のは当たり前のことだが、その事実を目の当たりするのは痛快でもある。もっと言えば、映画の評価も「個人的なこと」なので「何が良い作品」かも人それぞれ。
とはいえ、古い新しいに関わらず「良い作品」に多く出会うほどに、自分の中の何かが「磨かれていく」のは気のせいじゃない。
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