2025年3月5日水曜日

超教養

超教養

著者:さとう珠緒
発行:2007年3月30日初版
文芸誤報』か『本の本』のどちらかだが、あの斎藤美奈子から「ライバル出現か!?」と高く評価されていたのが本書。さとう珠緒という人を、ずっと前にテレビで観た記憶はあるが、「彼女はこういう人だ」という先入観がほとんどないので、本の帯にある:
さとう珠緒がこんなに知的で辛口だったなんて
そんな感想は抱かなかった。むしろ
まっとうなことを言ってるし、ユーモアを入れて上手く評してるな
が素直な感想。

『電車男』のことは殆ど知らなかったが、本書の紹介で何となく分かった。が、その物語やヒットした理由は私には理解不能。『電車男』、今では昔のことだが、「電車男的な描かれ方」は今でも顕在してる気がする。

さて、さとう珠緒の提言:
だから、『電車男』がヒットすることはとても有意義なこと。アキバ系の人が『電車男』を読んで、「俺も変わったほうがいいのかな」と気付いてくれると嬉しい。男の子は「俺、モテたい!」というやんちゃさがあったほうが絶対にイイもん。早く妄想から抜け出して、現実の世界で生きるべきです!P.11

彼女の批評は私と一致するし、上記の主張にも頷く。ただ、それらが彼らに受け入れらるかどうかは疑問だ。

本書では斉藤美奈子のように、女性視点から「男どもが妄想する女性像」を鋭く指摘するのは痛快。いわゆる「男にとって都合の良い女」、これも男どもの「妄想」なのだ。読み手を楽しませるためには、読者が男性なら「都合の良い女」の方が読んでて楽しいのだろう。

私の場合「そんな女性はいないよ」と思った瞬間、その本を読むのを止めるし、そんな著者の本は手に取らないようになる。もっと正確に言えば「キャラクター設定が薄い物語は楽しくない」のだ。

今気づいたが、「都合の良い女性」を男性作家が描くのなら、「都合の良い男」を描く女性作家もいるはずだ。意識しなかったが、斉藤美奈子あたりは、その辺もちゃんと指摘していることだろう。今後は意識して読むことにしよう。

さて、本書の出版が18年前、現在は本書のような発言は「タブー視」されてる気がする。

というのも、先日同僚のヒロシゲに「オタク文化を蔑むような発言」(実際は蔑んではいないのだが...)をしたら、「その発言、今ではタブーですよ」と言われた。テレビを観なくて日本のメディアからも距離を置くていると、どうやら色々と「遅れている」ことを痛感する。でもさ、「タブー視」してどうなる?「それぞれの自由だから」ということか? それって「臭いものに蓋」してるだけじゃないのか?


学校で教わることなのか?

本書とは直接関係ないが、非常に驚いた、というか呆れたかも...。

次は、「語り下ろし」である「オマケ2」の「さとう珠緒、センター試験に挑戦!」で紹介された、2007年度入試センター試験の現代社会の問題:

瞬時に浮かんだ感想:

これって学校で教わることなのか??

現代社会という名の科目が私の頃にあったか不明、理科系のクラスだったので、そもそも社会科の授業の選択肢が少なかった。なので、当時と今の「社会科」の教科の中身の比較はできないが...。

できないが、例えば「ヒッピー文化」なんて、一文で表現できるものなのか?例えば、Steve Jobs は Apple を起業する前は「ヒッピー文化に浸っていた」と思っている。そんな私にとって、「ヒッピー」を一文で表現することは不可能。

「ヒッピーてさ...」とか一文で語られると、むしろムカつくんですけど!その文化から生まれた豊な発想や思想、芸術や音楽だってあるのだ。教え方が「表層的すぎないか?」、つまり「薄っぺらい」としか思えない。

社会と文化は切り離して語るのは難しいのはわかる。わかるが、究極的には「それって教えてもらうことなのか?」が疑問の根底にある。教科書の限界、教師の能力の限界、学校の授業の限界、確かに全てを教えるのは不可能。だったら、もっと「根源的で基礎的で、将来自分で学べる能力を身につける」ことを優先してほしいな。

(1) へのさとう珠緒の反応:
「高校生とか予備校生って、こんな勉強までしてるんですか。もしや教科書に長髪でパンタロンの人の写真が載っていて、その下に『写真上/自然回帰を呼び掛けるヒッピー』とかって書いてあるとか!?『なにコレ縄文人っぽくね?』なんて笑われているかもしれないんだぁ。すごいですねえ、21世紀の教科書は」P.140

学校の音楽の教科書に「The Beatles の楽曲があるってよ」と言われたときに勝る衝撃。

教える側の先生、どんな気持ちで教えてるんだろう。インターネットもスマートフォンもある時代に生まれた20代の教師、そしてその生徒たち、皆さんで「なにこれ縄文人っぽくね?」てなってるのか?

(3) に至っては:
「ヒッピーに続いて、こっちは沖田浩之さんや松村雄基さんなんかの写真が教科書に出ているのかなあ。あるいは尾崎豊さんの詩を引用して、『盗んだバイクで走り出す若者が急増した』とか」P.140
古いな、さとう珠緒...(笑)
「えーっ、じゃあ、いまの受験生って、ヒッピーと沖田浩之さんの違いが曖昧だったりするの!? んなわけないのにー!もしやこれって昭和度判定テスト…?全然サービス問題じゃないじゃない!やっぱり回答を改めます。正解は(4)!」P.141
さとう珠緒、彼女は私と同様に「昭和の人」(笑)

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