2026年4月5日日曜日

名作うしろ読み プレミアム


名作うしろ読み プレミアム

著者:斎藤美奈子
発行:2016年2月10日初版

『名作うしろ読み』が楽しかったが本書も楽しんだ。前作同様に名作が取り上げられているが、本作では知らない著者や作品が多い。改めて私が「文学好きではない」が証明された感じだ。

斎藤美奈子の書評の本のおかげで、「名作と呼ばれてる作品だが、特に私が読む必要はない」と判断できる。それほど著者の書評は的確なのだ。逆に「読んでみたいな」と思わせる作品との出会いもあった、特に次の三作品:

 ・『高瀬舟』森鴎外 P.122
 ・『南方熊楠(みなみかたくまぐす)』鶴見和子 P.154
 ・『落日燃ゆ』城山三郎 P.156

『南方熊楠』は全く知らなかったのでかなり興味深い。

かなり意外だったのは、レインモンド・チャンドラーの作品を取り上げていること。実は Raymond Chandler の "The Big Sleep" を原書で読んでる最中で、非常に楽しんで読んでいる(日本語訳より面白い)。時代背景もあるが、かなり「男臭い」内容で、「あー、これがハードボイルドね」という感じ。なので、「斉藤美奈子はハードボイルドは嫌いだろうなー」と勝手に決めつけていた。実際、これまで彼女の書評でハードボイルドものを読んだ記憶がない。

本書で取り上げられたのは『長いお別れ』。ずっと前に、日本語訳を途中まで読んで断念したので、この書評は若干ネタバレだったが、上手い書評で読むのが楽しみになった。
どうです、このヒネった落とし方。ハードボイルド小説だから、ニヒルぶってますけどね。心の中ではマーロウ、号泣してるのよ。ひとつの友情がはじまって終わるまでの物語。マーロウにさよならをいう方法はまだ発見されていない、な男たちが多いはずである。P.171

いやー、斎藤先生も最後に「皮肉ってます」けどね(笑)

『長いお別れ』の前の『マルタの鷹』ダシール・ハメット P.168 の最後:
ハードボイルドとは感情表現を混じえず、外部から観察できる事実だけで構成された小説のこと。ハンフリー・ボガードが演じた映画も、サム・スペードのイメージに一役買ったと言われる。P.169
ハードボイルドの定義を完璧に言い表してる。ただ、斎藤美奈子らしい最後の一言:
でも、秘書の腰を抱いたり頭をなでたりするのは、現代ならセクハラです。真似しないよーに。P.169

"The Big Sleep" にはセクハラ的な描写はない気がするが、「昔の時代だなー」と思わせる場面は少ないくない。それは意外と楽しくて、「昔の方が良かったかもなー」となることもある。その辺は "The Big Sleep" を読み終えてから考察したい。

本書の最後の章「エンディングの『型』について」P.305 の「エンディングを読む効用」から:
納得できる結末も、腑に落ちない結末も含め、ラストに注意を向けることは、表現の細部に目を凝らし、物語全体を吟味し直すことに通じる。それは作品の新たな側面や、いままでと異なる解釈の発見につながるのだ、といっておこう。P.310

なるほどなー、これまで結末をそれほど意識して読んでこなかった気がする。物語の細部よりは全体の流れと面白さだけを主に評価して読んでいた。「えー、こんな終わり方なの?」とかの感想も抱いたことはない。音楽や映画などと同様に、作者の意思に任せて、物語に期待などしていないのかもしれない。

要は単純に「作品を楽しめるかどうか」だけの判断基準だな。深くは考えていないと思う。それだから私は「文学好き」にはなれないのかもな(笑)

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