2026年9月12日土曜日

日本の同時代小説


日本の同時代小説

著者:斎藤美奈子
発行:2018年12月14日第2刷(初版:2018年11月20日)

本書の「はじめに」の最後の節:
「自分の生きている時代の性格を知りたい」という思いは私も同じです。『日本の現代小説』ほどではなくても、本書がこの半世紀余の社会と小説を考える一助になれば幸いです。

これまで、フィクションであれノンフィクションであれ、本を読みながら「書かれた頃の時代や社会」のことを意識することはあまりなかった。ただ、本書を読んで「あー、時代の影響は受けてるよなー」と至極当然のことに気付かされた。

次の箇所は、奇しくも「9・11から25年経った」2026年9月11日に読んだ:
ジョージ・オーウェル『1984』(原書1949)を意識つつ、オウム真理教事件や9・11への連想を誘いつつ進む物語。(略)村上春樹がいかにこうした問題に不注意かを示しているのですが、注目すべきは、ここに「テロを肯定する思想」が流れていることです。殺人が日常茶飯事の村上龍じゃあるまいし、通常の意味では連続殺人犯である女性(青豆)を主人公にするなど、かつての村上春樹ではあり得ないことだった。P.216

村上春樹や渡辺淳一までが主人公に殺害をさせ、それに肯定的な意味を持たせる。2000年代はそういう時代だった。P.216

村上春樹も渡辺淳一も読まないのだが、確かに、ここで指摘されている作品のあり方は不気味である。村上龍は以前は読んでいたが、果たして今読んで、以前のように楽しめるのかは疑問だ。

ただ、そう思うのは、何十年もの時を経て思えることかもしれない。「その時代の空気感」に私も飲み込まれて、何の疑問もなく、そんな本を読んでいたことは否定できない。

その時代の渦中にいて、時代に流されるべきか抗うべきか、は私には分からない。ただ、こうやって過去の小説を振り返ることで、当時は見えなかった「時代の空気」が見えてくることはある。

今読んでいる小説にも、きっと今の「時代の空気」が流れている。それが何なのか分かるのは、また何十年か後なのかもしれない。

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